「乳首が短い」
「へこんでいる」
「これじゃ母乳をあげられないかも…」
そんな不安を抱えているママ、多いのではないでしょうか。
授乳がうまくいかないとき、つい自分の体を責めてしまう。
でも、それは本当に“乳首のせい”なのでしょうか?
乳首の形は関係ない? UNICEF/WHOもそう言っています
実は、UNICEFとWHOがまとめた「母乳育児支援ガイド」には、“母乳育児が困難になるリスク”の中に「陥没乳頭」「扁平乳頭」は含まれていません。
なぜかというと、乳頭の形やサイズは十人十色であり、それが母乳育児の成否を決めるものではないからです。
むしろ、母乳育児の継続に最も影響するのは、「援助者がどのような支援をしたか」という点だとされています。
つまり――
母乳がうまくいくかどうかは、“ママの乳首”ではなく、“支援のあり方”に左右されることが多いんです。
「あなたの乳首では難しいかも」と言われたママたち
私が助産師として関わってきた中で、「乳首が扁平で」「凹んでいて」「大きくて」と言われたママに何度も出会ってきました。
そして、その多くが「私は母乳をあげられない」と思い込んでしまっていました。
そんな声を聞くたびに、胸が痛みます。
だって、授乳の難しさは“乳首の形”よりも、“援助の姿勢”に原因があると感じているからです。
助産師として感じること
正直に言えば、「乳首の形で直接授乳できない」という言葉を聞くたびに思うんです。
それ、本当にママのせい?
それとも、援助者側が学んでいないだけじゃない?
私自身、学生の頃から「どうすれば授乳がうまくいくのか?」を考え続け、乳房のケアやポジショニング、赤ちゃんの吸啜リズムなど、あらゆる手技と工夫を学んできました。
どんな乳首の形であっても、角度を調整したり、抱き方を工夫したり、赤ちゃんに慣れて貰ったりすることで授乳は可能です。
実際、扁平乳頭や陥没乳頭のママでも直接授乳を続けられた方をたくさん見てきました。
だから私は、“乳首のせい”という言葉では片づけたくないんです。

ママの気持ちを置いてけぼりにしないために
ただ、ここで大事なのは「ママの気持ち」です。
授乳がうまくいかずに心が折れそうになっているとき、「頑張れ」や「できるはず」だけでは、余計に苦しくなることもあります。
だから私は、ママの気持ちを聞きながら、「今できる範囲」で一緒に考えるようにしています。
「まずは搾乳からでもいい」
「哺乳瓶と併用してもいい」
「少し休んで、またトライしてもいい」
そうやって選択肢を広げながら、「気づいたら母乳育児ができていた」という状態が私の理想です。
専門家としての見立ては必要です。でも、「できない」という前提で支援をしたくはありません。
逆に何がなんでも母乳!という雰囲気でブートキャンプのようにしたい訳でもありません。
「ママがどうしたいか?」を手助けする支援者でいたいと考えいます。
“妊娠中からの支援”が未来を変える
実は、母乳育児のサポートは妊娠中から始まっていると考えています。
妊娠中に「授乳のリアル」や「乳房ケア」について正しい情報を知っておくだけで、産後の不安がぐっと減ります。
最近は、母乳育児に特化したオンライン講座や書籍も増えてきました。
以前よりも母乳ケア用品(乳頭保護器・搾乳器など)も充実してきています。
自分に合った情報やアイテムを早めに知っておくことが、“母乳育児を続ける力”につながります。
世界的にみても、昨今は母乳推進です。
日本がその逆を行っている状態は、私たち専門家の関りや情報発信の仕方にも要因があると思っています。
どんなときも、ママを支える社会に
「母乳をあげられない」
「乳首が悪い」
そんなふうに自分を責めてしまうママが、まだまだ多い。
でも、本当は――
できないママが悪いのではなく、支援の方法がまだ足りないだけ。
だからこそ、助産師として伝えたいのは、「あなたの体や心は頑張っている」ということ。
乳首の形も、母乳の量も、授乳のペースも、全部“あなたらしさ”の一部です。
どうか、焦らず、比べず、信じてあげてください。
あなたと赤ちゃんのペースで、ゆっくり育んでいけばいい。
そして、もし困ったときは――私たち助産師が、側にいます。

